『悪夢探偵』

ある日、少女と中年サラリーマンの惨殺死体が立て続けに発見される。二人の被害者は自室のベッドの上で何者かに切り刻まれていた。事件を担当するエリート刑事・霧島慶子と同僚の若宮らは被害者が、「0」で表示される謎の人物と最後に電話をしていたことに気付く。やがて事件の鍵が“夢”にあると推測した霧島は、他人の夢の中に入る特殊能力を持つ悪夢探偵こと影沼京一の存在を突き止め、捜査の協力を申し出るが…。

怖い夢って見たことある?真夜中のガード下、暗くてじめじめした地下室、カビ臭いバスルーム、マンションのエレベーター、自分の部屋、切れかけた蛍光灯。繋がったままの携帯電話からは誰かの声が聞こえ、そしてあの金属質の轟音と共に「ヤツ」がにやってくる―。
夢の中ではいつだって逃げ足はとても遅くて、もがいてももがいても「ヤツ」からは逃げられない。足はもつれ悲鳴はノドに貼り付いて、「ヤツ」の振り上げた包丁が水銀灯にキラリと光る時、黒いマントを翻して現れるのは悪夢探偵・影沼京一。
大好きな塚本晋也監督最新作は、そんな他人の夢に入れる特殊能力を持ったニューヒーローが主人公。死にたい・死にたくない・ホントは死にたい・みたいなモノローグがメンヘルメンタリティ(そんな言葉はありません)には多少しんどかったりしましたが、本作は血みどろ臓物コンクリート、塚本モチーフはそのままに、妙に後味スッキリ仕上げな娯楽傑作。いや、大傑作!
その悪夢探偵を演じるのは、最近父ちゃんにそっくり(特に声とか)な松田龍平さん。はー、なんてカッコいいんでしょう!これまたニコ子さんの大好きなダークヒーローなんですが、素晴らしいダメダメっぶり。ホントは夢の中なんて入りたくないし、世界に絶望はしているし、自殺願望はあるし、おまけにマントの下は全裸。「ああ、いやだ、ああああ、いやだ、ああ、いやだ…。」だけど脚のキレイな女刑事(Hitomi)に頼まれると断りきれない。ああステキだ。ステキすぎる。
ええと、内容がこうでどう凄いとかはお友達の『瓶詰めの映画地獄 〜俄仕込みの南無阿弥陀佛〜』つうブログに書いてあるので…って思わず丸投げしてしまいましたが、自分が感想を書く前に彼のブログを見てしまうと、これから自分が言語化しよう、出来ればいいな、と思っていた感想のぼんやりした雲みたいなものが既にちゃんと文章になって並んでいたりするので、あーもう私はこれ以上書かなくていいかな、とか思ってしまうのです。
というわけで私は薄っぺらな感想をいくつか。Hitomiさんは各地で酷評されていたので心配だったのですが、思ったより良かった。ていうか全然悪くなかった。確かにお芝居は上手とは言えませんでしたが、塚本映画に演技力とかあんまり求めていないので、正直あまり気にならなかった。というかルックスがハマッていたのでそれだけでノー問題。塚本監督が起用する女優さんはいつも私好み(前髪パッツン多し)なので、これでもか!というほどの美脚強調に「そう、これだよこれ!!」って思いました。しかも寝間着はキャミソールです。素晴らしすぎる。そして脇を固める安藤政信さんや大杉漣さんはさすがの安定感。もちろん塚本監督もいつものどアップでど怪演。シリーズ化を考えているというお話ですが、そうなったら2作目にはもう監督は出てこないのかしら。それ寂しいなー。
あ、あと、松田龍平さんはもともとニコ子さんの好きな要素*1をかなり持っていらっしゃる俳優さんで、ものそいスキはスキなのですが、どこかなにかこう「グッと来ない」部分がありまして、それは何かずうっと不思議だったのですが、大画面でまじまじと顔を見て、口が小さいことに気が付きました。なるほど、これか!でもスキ。
ちなみに「演劇界の偉い人」ことケラ(リーノ)さんのブログでもココとかココで話題になっている例のお芝居、見れなかったことが非常に悔やまれます。…や、このエントリに書くことではないのだけれど(しらじらしく)。しかしこの映画を見た後、さーやさんという方のブログ「悪態の小部屋」に以前書かれていた感想を思い出し、より「さもありなん」と思ったものでね。「モノローグが多い」とか「役者が動かない」とか、舞台もきっと映像作品のままのアプローチだったのだろうなぁ、と。見てないのでなんとも言えませんが。
…まぁ人には向き不向きがね。ともあれ『悪夢探偵』は傑作です。またしても滑り込み最終日観賞だったのでアレですが、皆様DVD化された暁には是非!

追記

大事なことを書き忘れてた!フジファブリックのED曲がカッコ良すぎ。シビレる。映画のために書き下ろした曲らしいよ。

*1:長身とか切れ長とか。