『TOMMY』

THE WHOの大名作ロックオペラ『TOMMY』を劇団☆新感線いのうえひでのりさんが演出して日本語で舞台化。チケット代はお高いけれどこれは外せません!というわけで日生劇場に行ってきましたよー。
ネタバレするので畳みます。ネタバレしない範囲で言うと、「悪いほうの女幹部のくせに露出の少ない衣装で大きいお友達の目を欺いた後、番組終了直後に間髪入れずにヘアヌード写真集を発売」で一躍有名な、ガオレンジャーのツエツエさんの役の人が出ていたよ!
どこかでいのうえさんのインタビューを見たら、「昨年の来日公演を見たらピンボールの魔術師の場面が地味で気に入らなかったのであそこはド派手にしたい。」と仰っていて、私も大いに同感だったのですごく楽しみでした。しかもピンボールキングはROLLYさん。素晴らしいキャスト!楽しみが高じて、先週なんてTOMMYばっかり聞いてたよ。
幕が上がるまですっかり忘れていたのですが、ママ役は高岡早紀さんでした。前日に飲み屋で高岡さん(および寺島しのぶさんなど)の薄幸エロスについて熱く語ったところだったので、ホンモノ出てきて驚いた。舞台上で見るとやはり薄幸さより細さと顔の小ささに目が行きます(あたりまえ)。かわいいなー。…しかしロックオペラにはちょっとパンチ力に欠ける声。お芝居も歌も下手ではないけどロック感は無いわねぇ。
あとこれは高岡さんだけではなく全体的になのですが、歌詞が聞き取りづらかった。湯川れい子さんと新感線の右近さんが訳詞をされた、というのも目玉の一つだったので、ちょっと残念でした。原曲におもいきり慣れてしまっているので、やっぱりどんなに頑張っても、譜割りに不自然さを感じてしまったしなぁ。これは輸入ミュージカルの宿命なのでしょうけど。
お父さん役の方はミュージカル俳優さんなのかなぁ(と思ったらいわゆる韓流スターのひとである模様。)、語尾にやたらビブラートがかかっていて、これまたロックオペラ感は皆無。さらに声もわりと高く、河村隆一さんが現れたのかと思った。
もっといのうえアレンジが加わっているのかと思いきや、進行はかなりオリジナルに忠実。変態のアーニーおじさん(演じるは勿論新感線の怪優、右近健一さん)といとこのケヴィン(これもROLLYさん)はさすがでした。このお二人が舞台にいるとホッとします。中川晃教さんは歌上手いなー!恐ろしいほどに上手いなー。割とさらっとした、キーも低めな曲が多いので、あっきーファンでもないのにちょっと物足りない気すらしました。もっと高音が突き抜けるようなの歌っておくれよ!って。あのちまこくてにこにこしたルックスもTOMMYにピッタリ。あとはASIDQUEENが最高すぎた。なんだあの迫力。誰だあの人(韓国の歌手の方らしい)。
で、「ド派手な」ピンボールの魔術師は、ROLLYさんの他に、女性のピンボールクイーン(山崎ちかさん)が。ちかさんはROLLYさんの伝説の舞台『ロッキーホラーショウ』にもファントムで出ていらして、でもお名前に聞き覚えがある程度だったのですが、ASIDQUEENでメインボーカルと絡んで美声を披露されたあと、ピンボールのAメロをオクターブ高く歌ったので感動した。やっぱり声にインパクトがあるのは素晴らしいなぁ。そしてその間、TOMMYはクレーンに乗ってピンボールマシンを操作。客席全体が巨大なピンボールになっている、という仕組みでした*1。…が、私はチャンピオン2人組に夢中になっていたので、正直あんまり見てなかった。ひどい。でもね、良いお席だったので、クレーン見上げたらステージ見れないし。あのシーンは2階3階で見たほうが楽しかったんだろうな。
休憩を挟んで、後半にも今度はあっきーの歌で『PINBALLWIZARD』。あの曲は盛り上がるし短いし、確かに1回流れるだけでは勿体無いのよね。中川さんのピンボールマシンは映画版のチャンピオン仕様。手元のカバーを開けると鍵盤になっています。エルトン・ジョンよろしく弾きながら歌っていましたが、あれホントに弾いてるのかな?ROLLYさんの明らかな逆エアギター(ギターは持っているけど音は出てない)とは違って、割とそれっぽかったです。みんななんでもできるのねぇ。
カーテンコールは何故かROLLYさんがギターを持って登場、ASIDQUEENの方を中心にキャスト全員で何故かサマータイムブルースを。ROLLYさんテラカッコヨス。あとASIDQUEENやっぱりすごい迫力。なんならカーテンコールがいちばん面白かったです。
私は自分が見に行くお芝居はだいたい面白いなぁ、と思うしものすごくつまんなかったらそれはそれでまた面白いし、それなりの対価を払うことにあまり後悔もしないのですが、今回はちょっと微妙な心持ち。このように文章にすると褒めどころもいっぱいあるし、決してつまらなかったわけではないのだけどねぇ。演出も特別悪くなく、かと言って素晴らしい!という部分も特に無く*2、キャストの方々も歌詞も衣装もなんというかそれなりで、たぶん人に感想を聞かれたら、結局昨年来日版を見た時と同じように、「ピートタウンゼントすげぇ、THE WHO最高!」みたいなことを言ってしまうような気がする。

*1:客席に銀のボールが飛んで来る。

*2:いのうえ演出を見慣れすぎている、という話も。たとえばうしろが透ける巨大電飾スクリーンも『メタルマクベス』を思い出すし、中川さんが両手広げりゃ『SHIRO』に見えるし。