大人計画『ドブの輝き』

大人計画本公演。宮藤さん作品は何度か拝見していますが、松尾さんのお芝居を見るのは初めて。
今回は宮藤さん作『涙事件』、松尾さん作『アイドルを探せ』の間に、井口昇さんの映像作品『えっくす』が入るという、オムニバスの3本立て。
松尾・宮藤両者とも、作品は下品でバカバカしくて面白いんだけども、宮藤さんはただただ面白く、松尾さんのはどこか切実。きっと宮藤さんは健全な精神の人なんだろうなぁ、と改めて思った。松尾さんがアタマオカシイって意味じゃないんだけど。アタマオカシイで言ったらお二人ともそうだろうけど。ええ勿論良い意味で。どっちがどう、という話を書きたいと思ったんだけど、同じ役者さんが出ていながらもまったく別物だったので比較にはならない感じでした。
松尾さんが病気で降板され、かわりに池田成志さんが入られたのでどんなもんだろう?とそこは気になっていたのですが、もう成志節。ぜんぜん成志節。なにかセリフ言って決め顔で笑かす。ずるい。日替わりでアドリブを振られているらしきシーンがあったのですが、阿部さんも猫背さんも吹いてた*1
内容はと言いますと、池津さんがパンツで出てきたり、皆川さんがババァとキスしたり、村杉さんと池津さんがAしながらBしたりする芝居でした。ひどい説明。
村杉さんはいつもグループ魂のバイト君としてのイメージばかりが強烈なので、松尾作品での男気キャラとか意外で良かった。あと近藤公園さんの立ち姿がスッキリとカッコ良くて驚いた。TVだとエラばかり強調されているので、いとうせいこうさんみたいな括り(人として)で見ていたのですがとんでもなかった。『涙事件』の皆川さんの役には愛があったなぁ。平岩紙ちゃんが太った、という設定なのだけど、汚いお腹を丸出しにしつつも何処となく愛くるしいという。
そして芸達者な女優陣の中では、伊勢志摩さんが素晴らしかったです。井口さんの映像含め3作で、雰囲気まったく違う。以前、映画『恋する幼虫』で荒川良々さんの子供の頃の役をされていて、その時も「わ!」って思ったものですが、舞台でもやっぱ凄いな。宍戸さんのレズの姉(「わかんないや姉ちゃんレズだから!」)も凄いパンチ力でしたが。
松尾さんの作品はもっと凄みがあるのでは、と勝手に思い込んでいたので(十分凄惨だったけど)、『アイドル〜』のラストはちょっとあれー?と思いました。主人公(吐夢さん)が煉瓦をめくるとお米券が出てきて、全員並んでお米券の歌(大人フェスの例のあれ)を歌って終わる、っていう。「えー、そうなの?それ使う?」って。松尾さんは既出のネタを繰り返し使うタイプの人なんだろうか。初見なのでわかりませんが*2
お米券のうたが終わって、私などは「?(終わり?)」とちょっとポカンとしていたのですが、その間と拍手のあいだに、ステージ上で急に阿部さんがひとりだけニコニコし始めて面白かった。なにその愛されな感じ!
とにかく面白かったっす。うん、こういうの、すごくイイと思う!(紙ちゃんのマネ。)

*1:「好きな食べ物はなんですか?」「…サラダバー!!」その後「サラダバーの何が好きなんですか?」「うん、まぁ、クルトンだね。」

*2:そういえば雑誌『Hon-nin』連載中の小説にもはめ殺しの歌が出てくるね。