『追悼のざわめき』

ビデオ化もされていない80年代のインディーズどカルトアングラ映画がリマスタされて再上映、ということで、イメージフォーラムに見に行きました。松井良彦監督の『追悼のざわめき』。石井輝男監督の『恐怖奇形人間』と並んでいつか見たいなぁ…と思っていた本作はやはり今でも人気があるらしく、レイトショーながら劇場はなかなかの混み具合。上映期間もずいぶん長いみたいです。
アングラカルトと言ってしまうともう身も蓋もないけれども、80年代の香りの充満した閉塞的でとにかく嫌な映画でしたよ。だれひとり、なにひとつ得をしないという。だが、それがいい。映像のショッキングさが取り上げられることが多いのですが、今見るとグロさはさほどでもないです。いやグロいけども。グロいけども良い映画でした。面白かった。みんなたちも見てげんなりするといいよ。
10代の頃にこの映画を見たら、私はもっと、この主人公に、兄に、妹に、小人に、感情移入していたと思う。今はほんの少し胸を痛めて、でも最後まで目を逸らさず善意と悪意のこもった傍観者でいることが出来る。少し寂しいけれど私はちゃんと大人になっています。
先にこの映画を見に行った友人の映画ヲタにして筋肉少女帯ファンの栗本くん(レビューが最高すぎる。)と、深夜のファミレスで「人はみな映画館に娯楽を求め楽しむために行くはずなのに、なぜこんな陰惨な映画にばかり惹かれるのか。」という話をしたのですけれど、答えが出たらこんな残念な人生は送ってないです。
本当にありがとうございました。